川村泰雄著

■デンタルドッグ(完全な検査)

◇デンタルドッグとは
自分の健康を守るためには自分の身体の健康状態を客観的な専門的な立場で詳しく調べてもらい、もし自分が気づかなくても検査の結果に異常が見つかれば、その異常の状態をよく知り、治療し又はその身体の異常の改善のために努力しなければなりません。
そのために「人間ドッグ」といわれるシステムがあるわけです。最新の機械や技術を使用して身体の細部まで検査が行われます。
そして異常が発見されたら、その異常について専門家から詳しく説明を受け、その治療のための計画が話されるわけです。

現在の日本人ではこのように定期的に総合的な身体の検査を受けるのは常識となっています。最近ではこれが細分化され、「脳ドッグ」とか「肺ドッグ」など行われるようになりました。しかし、命の根管である歯はこれほど大切な臓器であるにも関わらずそのように定期的に検査を受け、健康管理をすることなどは日本ではほとんど習慣化されていないのが実状なのです。何故なのでしょう…。

歯を中心とする口腔の健康を調べるためにレントゲンや歯型をとって歯、及びそれを支える歯周組織の状態、歯列、咬合状態、下顎関節、顎口腔系の筋肉、神経の状態及び口腔癌の検査を詳しく行う必要があるわけで、いわゆる「デンタル・ドッグ」といわれる所以です。

今まで述べてきたように歯やそれを支えている歯と歯周組織の健康だけでなく、顎口腔系の健康、正常な機能を行えるようにしなければなりません。 お口の健康を作るには次のことをしなければなりません。

1. 口の中を完全に清掃しプラッグコントロールできるように口の中の衛生環境を整える必要があります。
2. 破壊的咬合ストレスがないよう、調和をはからなければなりません。

これらの問題は歯科医が治療としてかかわる部分で歯科医の責任です。 しかしあなたは我々が指導した方法で完全に口の中の清掃プラッグコントロールをしなければなりません。そうして口の中での咬み合わせに不均等な咬合ストレスが発生したら歯科医に知らせねばなりません。
 


また、食事と運動を続けて全身的な健康を維持すること、これらはあなたの責任です。もし歯科医とあなたがお互いに責任を果たせば、あなたの歯を一生涯守ることができるのです。

今までの古典的な歯科臨床は痛いところをなおし、虫歯を治し、その穴を詰め、または冠を入れ、悪い歯を抜いた後に義歯を入れるというような修繕的な治療だったのです。そうして歯科医にかかるのは痛かったり不都合ができたときだったのです。歯を修繕するときその歯だけ診れば良かったわけで、口全体の機能などはあまり問題にしなかったわけです。また、人々も歯がたとえ抜けていても日常生活にあまり支障がなければ放置していました。そうして歯列は崩壊し、咬合に不調和が起こり、顎口腔系の組織に異常が起こり、頭痛、肩こり、筋肉痛、精神的不安定などが起こっても、原因は歯からなど考えも及ばなかったのです。

しかも日を重ねるごとに歯は悪くなり、歯周病も進行し、歯が失われていきます。この場合も歯が失われるのは老化だと理解し、あきらめていました。50歳で5本の歯が、60歳で10本の歯が、70歳では20本近くの歯が失われ、人生80歳という高齢者の時代となりましたが、多くの高齢者は歯を失われた状態で、日常生活を送っているわけです。
しかしその人たちも毎日歯を磨いて歯を大切にしている努力が払われているのです。

日本の大多数の人たちはこのような歯との人生をたどっているわけです。 私たちの歯科診療所を訪れる人たちも歯に対する考え方、歯科治療に対する期待もこの次元なのです。

口腔科学として多くの研究が行われ、種々の知見が発表されていますが、これらの科学が実際に多く人々に役立っているかというとほとんどそれは本棚の片隅に追いやられ、現実は百年来の修復歯科医療という"かび"の生えたものが横行しているということです。これは大変不幸なことです。歯科医が目先だけのことに追いやられ、このすばらしい口腔科学を日々の臨床の中で応用する努力をせずに大衆を無知のままに放置し、その人たちの要求だけに応えるだけで日々を送っていることは社会から怠惰のそしりを受けて当然だと思われます。

口腔科学として発達してきた歯科が臨床の中に積極的に取り入れられ、この科学の恩恵を得て多くの人たちのクオリティライフを高めていくには患者さんの正しいこれらの問題に対する理解が必要になります。そうして健康を作り上げるための自己責任を持ってもらわなければならないのです。

健康というのは歯科医や衛生士の手では作ることはできないのです。本当にこの健康の価値を知り、この健康を作るために自己責任を持っている人だけがこの健康を手に入れる事ができるのです。歯科医やそのスタッフはただその手助けをするだけなのです。

 


◇出会いの大切さ
私たちの診療所に訪れるほとんどの人たちは古典的な歯科臨床を受けた人たちであり、口腔の健康ということはほとんど知らない人たちです。

私たちはこれらの人々に私たちの目指す歯科臨床の目的は"口腔の健康"なのだということを知ってもらう必要があるのです。
たとえ、従来からの歯科医のつもりで歯痛を治してほしいと行って来られた患者さんであっても、充分お話を聞くことから始まるのです。

歯科の治療椅子に最初から座っていただくのではなく、静かな部屋でゆとりとくつろいだ形で椅子にかけていただき、話が始まります。

"今日自分は何を悩んでいるか、問題を持っているか。(もちろん、歯だけの問題だけでなく日常的な問題にしても)"を詳しくお話を聞くことから出発します。患者さんは歯科に対する悩み、老いに対する不安、歯科医に対する様々な要求、痛くないようにとか治療される不安感、経済的な問題等々、また全身的な健康問題、今自分の持っている成人病のこと、また、家族のことなど多岐にわたって話が広がっていくことでしょう。この出会いは、初めは患者と歯科医という役割的なものだったでしょう。お互いが患者という仮面と歯科医という仮面をかぶっているわけですが、話が進むに従って患者さんはリラックスし、今まで自分を守るための固いガードも取り払われて本当の自分を出して大丈夫だとの安堵から顔の表情は和らぎ、種々のことを語りかけられます。

歯科医は当然本来の自分を患者さんの前に投げ出して、職業としての役割でなく、人間としての出会いを作るように努力していきます。患者さんは一人の人間としてどのような問題を今もっておられてそれを自分はどのように感じておられるのかということを率直に語られます。歯科医は傾聴し、心から患者さんの身になって患者さんを助けてあげよう、この人のため手を貸してあげようと思うわけです。患者さんと歯科医のこの会話は役割の出会いでなく、人間と人間として心の交わりを感じる時間を過ごすことからスタートしていきます。
患者さんたちは日々生活を送る中で歯や口の状態を通じて感情を持っている。

 


・インタビュー
◇50歳過ぎの和服が似合うご婦人
「最近、結婚式などの会合にお呼ばれする機会が増えたのに、テーブルに運ばれる豪華な料理を前にして私の歯では咬めないという思いが先に立ってなかなか箸がつけられません。これは大丈夫だろうかとこわごわ口に入れて食べ始めますが、どうしても人より遅れ、みんなの間で弾んでいる会話もついていけなくなります。おいしいご馳走もゆっくり味わうこともできないし、華やかな話題から自分一人取り残されていく気がします。もう結婚の披露宴など行きたくありません。」明るい社交的だといわれていた性格も落ち込んで暗くなり、今ではすっかり人嫌いになって家に引きこもりがちになってしまったそうです。歯が悪いことは苦痛だけでなく、知らず知らずのうちに人を無気力にし、自信を喪失させていきます。

◇ 若いころからミス〇〇といわれたほど美しく、チャーミングな笑顔で周囲の人気者だったそうですが、
「子供が大学へ受験するころから歯を痛めるようになりました。よく歯肉が腫れるのです。それと共にきれいに並んでいた前歯がゆるみだし、やがて反っ歯が目立つようになってきました。自信があった口元も今では醜く自分の顔を見るのもイヤになります。つい話をしても口に手をやり、また人前で笑うこともできないのです。ちょうど更年期になったことも重なって気分は完全に「鬱」。

◇馬力のある中小企業の社長。ゴルフの飛ばしやで有名でしたが、60を過ぎたころからボールが飛ばなくなった、というのが開口一番の言葉でした。
「理由が分かっているのです。歯が動くのです。ここ数年歯がゆるみだしたため、何本も抜いて義歯を入れてもらったのですが、具合が悪く歯を食いしばると動いて力が入らないのです。瞬発力のいるティーショットなど以前の半分の距離もでなくなり、何か体力に自信がなくなりました。仕事も根気がなくなり踏ん張りがなくなったようです。」それらのことが気がかかりになり、一度に老いが極まってきた実感を語っておられました。

◇45、6歳の一流の都市銀行に勤めておられる実直そうな紺の背広がよく似合う人ですが、少し「鬱」気味で表情も乏しく元気がないのです。
「実は高校生の長女がお父さん近頃口が臭うというのです。家内もだいぶ前から気づいていたようです。口臭というのは自分では分かりませんが、長女からそれをいわれてからずっと気になりだして、4月の新年度の移動で課長になったのですが、部下の女子従業員に話をするときも何か皆が私になじまず、コミュニケーションがうまくいかないのです。ひょっとしたら私の口臭で私をいやがっているのかなあと思い始めてからだんだんこちらが落ち込んでいくのです。私、口臭がありますか。何とかならないでしょうか。」と、その口調は何か私にすがるような口調でした。

◇37歳の奥さんが子離れをして二人の子供が学校に行くようになりました。ご主人は一流商社に勤務しておられるサラリーマンです。毎日は大変忙しく、家に帰られるのは毎晩のように深夜になります。また一ヶ月に数日は出張で外泊が多く、だんだん家族との交わりが少なくなったようです。奥さん自身はやっと自分自身を省みる余裕ができたのですが、気持ち的には充実感はなく、常に訳の分からない不安に駆られています。それは自分自身に自信がもてない不安なのです。化粧の時に自分の顔をつくづく眺めていても、その鏡の中の顔は昔のあの若さが失われ、子供のために毎日自分を忘れて過ごしてきた間に顔のつやも張りもなく、特に口元は不潔感すら感じるようになってきました。もともと若い頃から歯には自信がなく、特に前歯は高校一年の時に自転車から転んで前歯を強く打って歯を折ってしまったのです。口を血だらけにして家に帰ったとき、お母さんの驚きは大変でした。私も痛みと同時に唇が腫れ上がり、前歯はぐらぐら。本当にその時のお母さんや祖母さんたちが「若い娘がこんな事になって」という声の中で気を失ってしまいました。

歯科医に皆に付き添われていき、ぐらついている歯を抜歯をしました。歯は抜けるし、腫れたくちびるの鏡の中の自分の顔を見て、つい泣き出してしまいました。学校へは一週間休み、マスクをして登校しました。

三ヶ月後には歯科医で前歯にブリッジを入れてもらったのですが、大きな口を開けて笑ったりするのが恥ずかしく、歯に対してのコンプレックスが常にありました。思春期でもありましたが娘時代は陰気な娘であったようです。白い前歯の人が大変うらやましく、テレビを見ていてもいつもアイドルたちの白い歯が気になりました。

しかし、25歳で男らしいすばらしい夫と巡り会い、幸せな結婚生活を送り、二人の子供に恵まれましたが、子育てが終わって鏡に映る顔、口元がみにくく見える自分にいいしれぬ不安がよぎったのでした。

このように初診で私たちの診療所を訪れる人々が私たちに訴えられる"主訴"の裏にはこのような思いがあるのです。その人の"主訴"だけにかかわるのではなく、毎日の生活感情の中で主訴がどのように関わっているかをその人と一緒に聞いていくとき、初めて私たち歯科医がただの技術者ではなく援助者として、その人が健康への道を見つけて歩んでいかれるように手を貸してあげたい気持ちが関わるわけです。患者さんたちは口腔の健康とは何かを理解していただき、主訴を通して健康な口を作る方法を学ばれ、健康への自己責任を育てていかれるわけです。

 


◇検査
歯や歯周組織のみならず、顎口腔系及び口腔癌などの検査を徹底的に行うわけです。

◇レントゲン検査
歯科用レントゲンはここの歯牙の状態および歯周組織の状態を詳しく知るには必要欠くべからざるものです。その意味でも4×3pの小さなフィルムで18枚撮影します。これは小さな口の中で実物大の大きさで写します。32本の歯を隅々まで詳しく歯冠、歯根の状態、歯根膜、歯髄、歯槽骨等々をみるには必要な枚数なのです。

 

レントゲン検査より以上のことが診査されます。

1. 「修復物の量」:充填物、冠、ブリッジなどがどのように修復されているか、またその量をみます。これは患者さんが今まで歯科医にかかった歴史といえるでしょう。

2. 「修復物の質」:修復物が歯牙に精密に適合しているかをみます。適合が悪いということは口の中の衛生環境が悪くなることになります。歯牙と修復物がミクロン単位で適合していなければなりません。その隙間にプラッグが増殖して虫歯を作り、また歯周組織に炎症を起こすことになります。

3. 「虫歯の有無と状態」:歯と歯の間、歯と修復物との隙間、咬合面からの虫歯の状態、進行度を調べます。

4. 「歯根周囲の感染の有無」:歯の中の歯髄が虫歯により感染すると歯髄が壊死を起こしその結果、根の先端部の骨が感染により破壊されレントゲン像に黒く撮影されます。

5. 「歯髄の状態」:歯の中に歯髄があり、その歯髄は俗には「歯の神経」といわれているところです。年齢によって少しずつ小さくなっていく傾向があります。従ってその大きさを知ることは大変今後の治療を行うに当たって重要な情報になります。

6. 「歯根の状態」:歯の根の本数はだいたい解剖学的に歯によって原則として決まっていますが、しかしその変則的な場合もあります。その大きさ、太さ、長さ、根が骨に植わっている方向、歯冠と骨に植わっている歯根の長さの比率等は大変重要な診断上の情報です。

7. 「歯槽骨の状態」:歯根を支えている歯槽骨は歯周病によって破壊されますが、その破壊の状態を調べます。プラッグによって侵されるときは水平的に骨が吸収されますが、歯には快適咬合ストレスがかかると根の周囲から垂直的に骨の吸収が起こります。これらは歯周病治療の予後の問題として重要な情報です。

8. 「歯根膜」:歯根の周りに歯根と歯槽骨との間に薄い血液に富んだ繊維性の膜があり、歯根と骨とをつなぐ役割と同時に歯にかかる力を歯槽骨に直接強くかからないようにショックアブソルーバーの役目を果たしています。しかし歯に強い咬合ストレスがかかると歯根膜が肥厚してきます。レントゲンでは歯根の周りの歯根膜の部分が太くなっていることによりその状態が分かります。

9. 埋伏歯の有無:智歯は17,8歳で顎が発達しきったときに萠出してきますが、顎の大きさと歯牙の大きさとの不調和なとき、智歯の生える余地がなく、真っ直ぐに生えることができずに水平に生えたり、また歯が頭を出すことなく骨の中に埋伏したままになることがあります。これらの歯は他の歯に圧力をかけたり、また食べかすが溜まりやすく虫歯や歯肉に炎症が起こるおそれがあるときは抜歯しなくてはなりません。智歯の他にも上顎犬歯、また過剰歯等の埋伏歯などがあります。

 

◇診断用歯型模型による検査
上下歯列の型を採り模型を作りますが、その模型を患者さんと一緒に調べていきます。このときなども患者さんにとっては自分の歯型を見るのは初めてのことですので大変興味があることでしょう。

毎日鏡で自分の顔を眺めます。女性であれば化粧をしながら、男性でも朝晩洗面時ひげを剃り顔を洗って鏡で自分の顔を見るはずです。口はその顔の真ん中にあり、口を開ければ見えるはずですが、前歯を除いて口の中がどのような状態であるか目で確かめて知っている人は少ないのです。自分の歯が現在何本あるか、どのような修復物がどのようにはいっているかということもビジュアルではとらえておられません。大抵の人は舌の先で触ったり、味や触覚で「塩辛い味が歯のこのあたりでする」とか、また、舌で触って「歯と歯の間に物がはさまる」、「何かとがっている感じがする」とか、歯が何本抜けてどのようなブリッジが入っているかも知ってはおられません。不思議なことです。

しかし自分の歯型は本当に客観的に自分の口の中の様子を注意深く観察することができるのです。歯の数だけでなく、歯並びの状態、歯が抜けたところの状態、歯の傾斜、歯がのびているところ、虫歯の穴、修復物の状態等々…。歯だけでなく歯肉の型、歯と歯の隙間、歯肉の退縮状況等々…。また、上の歯と下の歯との噛み合わせの状態などは…。それは興味津々、自分の再発見、しかし自分の歯を大切にして口の健康を気遣うのはしっかりと自分の目でその状態を確かめることから出発すると思います。何をどのように大切にするか、しっかりと目的を持たない限り歯を大切に守るのは難しいものです。私たちは患者さん皆と一緒にそのお手伝いをいたします。

◇顎口腔系組織の検査
咬合の検査
先に述べましたように上下の歯の噛み合わせは微妙なもので、少しの不調和でも顎口腔系に種々の異常が起こります。患者さんの下顎が、顆頭が関節下の中で正しく円板と共に関節窩の最上方に位置するところが最も安定した健康な顆頭の位置なのです。その位置で下顎が蝶番のように動きます。その動きの中で上下の歯の接触が不均衡であったり調和を失うと顎口腔系の種々の組織に異常が起こります。

従って下顎をその中心の位置に手で誘導し、異常な接触や干渉がないかを調べます。また歯型を咬合器という患者さんの下顎の蝶番の動きと同じように動くようにできている咬合器につけて口外においても患者さんの歯の咬合状態を検査することになります。

咀嚼筋の検査
咀嚼するために下顎骨を動かす筋肉には、側頭筋、咬筋、内側翼突筋、外側翼突筋があります。筋肉は咬合の接触異常によって緊張が起こりますが、それらの筋肉に触診によって緊張がないかを調べます。特に、外側翼突筋の触診は自覚症状はほとんどないときでも前駆的に触診により痛みを感じることがあり、顎関節症の早期発見に役立ちます。そのほかに首の周りの筋肉や背中の方の筋肉、肩の筋肉も触診し、それらの緊張を調べます。咬合の不調和によりこれらの筋肉にも波及しているかどうかを詳しく調べます。

下顎関節部も外側から触診をして痛みがあるか、どのような動きをしているかを調べます。また、口をいっぱいに開けてどのくらい開けることができるかを計測します。大体平均は4.5から5p程度です。開口筋が緊張しているときは開口径も小さく、開口障害が起こるのです。

下顎関節の検査
下顎顆頭と関節との間に下顎円板があり、下顎が動く時にその円板は顆頭の上に乗ってスムースに動くわけですが、下顎挙上筋の乱れや、また外傷によって円板が顆頭からずれ、はずれてくると、下顎関節部に「コツン、コツン」という関節音が聞こえます。また、少しのずれがあっても、毛をねじるような音が聴診器によって聞こえます。これも下顎関節の状態を検査するときの参考になります。

下顎関節のレントゲン
下顎関節の状態をレントゲンで調べますが、関節や顆頭に変形はないか、また炎症がないかをまず調べます。また、円板が顆頭の上から変位しているかどうかを診ることができます。

◇口腔内の小旅行
先にも述べましたが、口の中というのは顔の真ん中にあって鏡の前で口を開ければ誰にでもよく見えるものですが、しかしあまり多くの人は口の中を細かく見たことはないようです。そこで私たちは検査の時に患者さんに鏡を持ってもらって口の中をしっかり見て確かめてもらうことにしています。ですから口の中の小旅行(オーラルツアー)と呼んでいます。

歯周病の検査
・歯肉の色
歯肉の状態の色、硬さ、表面構造、形を見ます。炎症のあるときは暗赤色となり、表面は柔らかく歯と歯の歯肉は腫れてきます。

・歯の動揺度
歯を支えている骨が歯周病で破壊されてきますと歯は動いてきます。歯の動揺度は大体3段階に分類して検査されます。
1度…1o以下、2度…1o、3度…1o以上で上下動

・歯肉溝の状態
歯肉と歯との間の歯肉溝は通常健康な場合で1o〜3oの深さですが、歯周病で骨が破壊されてくると歯肉溝の深さが深くなってきます。歯の周り6ヶ所の歯肉溝の深さをプルーベで測っていきます。また、測定時に歯肉溝から出血がある場合、歯肉溝内の歯肉の内面に炎症があるということが分かります。

口腔内軟組織の検査
・ 口唇(色、ひび割れ、裂溝)
・ 口腔底(病変、腺の状態)
・ 頬粘膜(膨大、病変、角化)
・ 舌(大きさ、舌縁の凸凹、乳頭、舌苔、裂溝、色)
・ 口蓋(形、高さ、隆起)
・ 顎下部位

これらの検査は口腔癌の早期発見につながります。

 


口腔の健康をつくる治療計画 


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