◇8020達成への実績
(1) メインテナンスの対象者の概要
メインテナンスを連続して継続したものは1,076名であった。このうち、男性は406名(38%)、女性が670名(62%)である。無歯顎者は集計から除外した。
分析にあたっては、メインテナンスのメンバーを初診時の年齢により、
若年者 20歳〜35歳をGroup1(G1)
中年者 36歳〜50歳をGroup2(G2)
高齢者 51歳〜70歳をGroup3(G3) と分類し、それぞれのグループをさらにメインテナンスの期間により
15年間メインテナンスグループ
20年間メインテナンスグループ
25年間メインテナンスグループ に分け、そのイニシャルニーズとメインテナンス下における治療ニーズを比較分析した。
対象者の内訳は以下の表に示した。
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イニシャルトリートメント
終了時の年齢 |
15年後
メンテナンス時
の年齢 |
20年後
メンテナンス時
の年齢 |
25年後
メンテナンス時
の年齢 |
| G1 |
20-35歳 |
35-50歳(156名) |
40-55歳(103名) |
45-60歳(46名) |
| G2 |
36-50歳 |
51-65歳(147名) |
56-70歳(188名) |
61-75歳(51名) |
| G3 |
51-70歳 |
66-85歳(71名) |
71-85歳(48名) |
76-85歳(7名) |
| G4 |
20-70歳 |
35-85歳(347名) |
40-85歳(339名) |
45-85歳(104名) |
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(2) イニシャルニーズの内容
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@ G1では13本のニーズがあり、それは現存歯25.6本の51%を占めた。初期う蝕が全ニーズの50%を占めた。
A G2では初期う蝕は減少して26%となり、晩期う蝕の修復であるクラウンのニーズが46%を占めるに至った。平均現存歯25本のうち50%が治療処置を必要とした。
B G3ではニーズはさらに多くなり、現存歯18本のうち、15本が治療処置を必要とした。
C 現存歯数に対する失活歯の割合は、G1では現存歯数26本中2.4本で約9%、G2では23本中13%であるが、G3では18本中4本を占め22%の高率であり、加齢ごとに蓄積されたニーズが多く、健康の質が低下していることがわかる。
D 失活歯のすべてについては再治療を行った。
E 歯周病治療はG3が最も多く5%であり、G1の2倍に達している。
F 義歯はG3では半数以上の57.5%の人たちが装着している。その中で上下の義歯を入れている人は22%であり、高い率を示した。治療終了時の現存歯数は平均19本であり、約10本の喪失歯が存在した。
G イニシャル治療の期間は8ヶ月から1年を要した。来院回数は32回から52回であり、治療に要した時間は42時間から68時間であった。
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(3) メインテナンス下における治療ニーズ
メインテナンスの対象者について、メインテナンスの期間内に、初診時とメインテナンス経過後の現存歯数、う蝕の発生、ならびにクラウンの再生、根管治療、歯周病治療についてのメインテナンス下における治療ニーズの状況について、表に示した。
メインテナンス期間15年の対象者のニーズ
| |
人数 |
現存歯数 |
う蝕発生 |
クラウン
再製
本数 |
根管
治療
本数 |
歯周病
治療率 |
Initial
Treatment |
15年後 |
VERGIN
CARIES |
二次
う蝕 |
G1
(20-35歳)
→
(35-50歳) |
156名 |
25.9本 |
25.4本 |
7.78本 |
1.03本 |
0.27本 |
0.67本 |
5% |
| 喪失歯0.5本 |
計8.81本 |
G2
(36-50歳)
→
(51-65歳) |
147名 |
23.7本 |
22.8本 |
4.83本 |
1.04本 |
0.63本 |
0.74本 |
26% |
| 喪失歯0.9本 |
計5.87本 |
G3
(51-70歳)
→
(66-85歳) |
71名 |
19.2本 |
17.8本 |
3.83本 |
0.91本 |
0.41本 |
0.61本 |
32% |
| 喪失歯1.4本 |
計4.74本 |
| AG |
374名 |
|
|
5.48本 |
0.99本 |
0.43本 |
0.67本 |
21% |
| 喪失歯0.93本 |
計6.37本 |
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メインテナンス期間20年の対象者のニーズ
| |
人数 |
現存歯数 |
う蝕発生 |
クラウン
再製
本数 |
根管
治療
本数 |
歯周病
治療率 |
Initial
Treatment |
20年後 |
VERGIN
CARIES |
二次
う蝕 |
G1
(20-35歳)
→
(40-55歳) |
103名 |
25.3本 |
24.7本 |
8.87本 |
1.18本 |
0.36本 |
0.80本 |
9% |
| 喪失歯0.6本 |
計10.05本 |
G2
(36-50歳)
→
(56-70歳) |
188名 |
23.1本 |
21.6本 |
5.65本 |
1.19本 |
0.79本 |
0.84本 |
22% |
| 喪失歯1.5本 |
計6.84本 |
G3
(51-70歳)
→
(71-85歳) |
48名 |
19.4本 |
14.9本 |
5.28本 |
0.69本 |
0.41本 |
0.39本 |
30% |
| 喪失歯4.5本 |
計5.97本 |
| AG |
339名 |
|
|
6.6本 |
1.02本 |
0.52本 |
0.67本 |
20% |
| 喪失歯2.2本 |
計7.62本 |
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メインテナンス期間25年の対象者のニーズ
| |
人数 |
現存歯数 |
う蝕発生 |
クラウン
再製
本数 |
根管
治療
本数 |
歯周病
治療率 |
Initial
Treatment |
25年後 |
VERGIN
CARIES |
二次
う蝕 |
G1
(20-35歳)
→
(45-60歳) |
46名 |
25.5本 |
25.3本 |
5.58本 |
1.47本 |
0.36本 |
0.76本 |
3% |
| 喪失歯0.2本 |
計7.05本 |
G2
(36-50歳)
→
(61-75歳) |
51名 |
21.1本 |
18.8本 |
4.66本 |
1.27本 |
0.83本 |
0.91本 |
19% |
| 喪失歯2.3本 |
計5.93本 |
G3
(51-70歳)
→
(76-85歳) |
7名 |
17.2本 |
15.1本 |
5.78本 |
0.94本 |
0.48本 |
0.05本 |
30% |
| 喪失歯1.9本 |
計6.72本 |
| AG |
104名 |
|
|
5.34本 |
1.22本 |
0.57本 |
0.57本 |
17% |
| 喪失歯1.47本 |
計6.56本 |
|
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| @ |

喪失歯数 経過年数15年、20年、25年の各グループにおいて、G1の年代、つまり20歳から35歳にメインテナンスを開始した年代では、この間の喪失歯数がいずれも1本以下であり、15年から25年を経過した後も、平均して約25本の現存歯を有している。
その他の年代においても、15年から25年間にわたって、年間平均喪失歯数をほぼ0.1本、あるいはそれ以下にとどめることに成功している。この世代では、Initial
treatmentの時期にすでに何本かの歯を喪失している人が多く、初期の平均現存歯数が少ないので、メインテナンス後の現存歯数が20本以下になっているグループもあるが、早期から開始すれば、もっと高い効果を上げることができたと予測される。
つまり、若年時にInitial treatmentを受けてメインテナンスを開始し、 あらゆる年代にわたって、適切なメインテナンスを継続して受けるならば、8020は達成できることが、ほぼ明らかとなった。
喪失の原因は、G1では喪失歯数はきわめて少ないが、90%が歯周病であった。G2では85%が歯周病、G3では予想に反して、う蝕による喪失率が30%に達している。これは修復歯のほとんどが無髄歯であり、ポストコアが装着されており、歯根劣化により抜歯を必要とする結果となっているためと思われる。
アクセルソンは歯周病以外の歯の喪失の原因は歯牙破折で75%に達している、と報告している。上記の結果も、それを裏付ける結果となっている。
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| A |
う蝕発生率
メインテナンス期間におけるう蝕の発生状況は、各グループとも2〜3年に1本近くの発生をみており、特に若年期においては現存歯数が多いこともあって、それだけ他の青年・老年期よりも多い発生をみている。いずれの年代においても、う蝕の発生予防には積極的な働きかけが重要であると思われる。
ただし、う蝕全体の中で二次う蝕の占める割合が、メインテナンス年数の増加に伴って増加している傾向が見られる。これはイニシャルニーズに対する修復に際して、マージンの位置、適合の改善、プラークコントロールと歯面清掃などによる、根面う蝕に対する予防的な処置などが、予後の好結果を生むもとにつながるものと思われる。
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| B |
根管治療ニーズ
う蝕発生本数に比し、根管治療の処置は各グループともに約10%に過ぎず、第二次予防効果が上がっていると思われる。
また、Initial treatmentにおいて再治療をしているため、再度の根管治療が必要とされないという効果もあったと期待される。
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| C |
歯周治療ニーズ
歯周病治療は、その治療率は各グループともにメインテナンス年数にかかわらず、G1では3%〜5%、G2では19%〜26%、G3では30%であり、加齢ごとにその率は上がる傾向にある。
当然予測されることながら、加齢とともに、メインテナンスのための通院の頻度やケアの内容に、特に配慮を要することが確認された。
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| D |
その他
特筆すべきことは、小児歯科より成人に達しても、 メインテナンスを継続しているメンバーが64名に及んでいる。小児歯科よりのメンバーのイニシャルニーズは、充填7.3本、クラウン0.04本であり、圧倒的に初期う蝕であることがわかる。メインテナンスニーズは、根管治療は"0"であった。もちろん喪失歯も"0"である。
そして、これらの対象者の成人後のメインテナンスでは、う蝕の発生率は10年、15年経過グループとともに低く、根管治療も10年0.25本、15年0.32本と低率である。喪失歯は"0"であった。
"8020"の目的のためにも、失活歯、歯周病治療ニーズの発生を押さえれば、8020の可能性は限りなく100%に近くなるものと思われる。
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◇8020への挑戦
以上の、初期治療とメインテナンスを併せて予防を中心とした歯科医療の経験と、その結果に関する分析から、8020の達成に向けて、以下のような結論をまとめることができる。
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@ 小児期より定期的なメインテナンスを成人後も継続して行った場合には、ほぼ100%、8020を達成することが可能である。
A 35歳までにInitial treatmentを受け、メインテナンスを継続することにより、8020を達成する大きな可能性がある。
B たとえ35歳以降にInitial treatmentを受けても、メインテナンスを継続して行うことにより、少なくとも8015の可能性がある。
C これらの達成のためには、徹底したホームケアと、そのための継続したモチベーションが必要である。
D 歯周病のコントロールにおいては、適度の間隔をおいて、定期的な専門家による歯口清掃が有効である。
E あらゆる年代において、できるだけ歯髄を保護することにより、老人期の歯の喪失を極度に防ぐことができる。
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われわれは、8020という国民に掲げた目標に向けて、歯科医療を技術から科学に脱皮させる時にきている。それは国民のQuality
of Lifeの向上に寄与するだけでなく、われわれ歯科医療に従事する者の専門家としてのクオリティ・オブ・ライフの向上にもつながり、それこそが国民の信頼を回復することになるのである。
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